刀の匠から技をつかむ!

日本刀の匠から技をつかむ!

新作名刀展にて特賞6回受賞、国選定保存技術「日刀保たたら」村下養成員としてたたら操業に従事、刀のコンクールにおいて最高賞を受賞し、一流の刀鍛冶として活躍する髙見太郎國一氏にお話をうかがいました!

刀鍛冶
髙見 太郎國一(たかみ ?たろうくにいち)
 
 
【ウェブサイト】httpss://www.kuniichitakami.com/

「Google Cultural Institute」髙見國一氏
グーグル(Google)の日本工芸作品を世界に紹介する「Made in Japan: 日本の匠」プロジェクトに髙見氏が掲載されております。
オンライン上で美術作品や歴史的文献を閲覧できるサービス「Google Cultural Institute」。
オンライン上で、世界各地の美術館や博物館の美術作品や歴史文献を閲覧できます。

「髙見太郎國一 刀工/刀鍛冶 髙見國一 オフィシャルウェブサイト – お守り刀/守り刀製作」こちら▼
httpss://www.kuniichitakami.com/

≪主な経歴≫

平成4年 刀匠 河内國平師に入門
平成6年 柳村仙寿氏に刀樋やタガネの基本を学ぶ
平成9年 5年間、国選定保存技術「日刀保たたら」村下養成員として、たたら操業に従事
平成10年 文化庁より美術刀剣類製作承認を受ける
平成10年 ~平成13年まで 新作名刀展出品、入選
平成11年 髙見國一鍛刀場設立
平成12年 新作名刀展入選
平成13年 東京芸術大学にて特別講義助手として従事
平成14年 新作名刀展 優秀賞受賞
平成14年 日本の名刀と播磨の刀展出品
平成15年 新作名刀展 努力賞受賞
平成15年 大阪市立歴史博物館にて河内國平作刀講義に従事
平成16年 ~平成17年 新作名刀展 努力賞受賞
平成18年 新作名刀展 全日本刀匠会会長賞受賞(特賞)
平成19年 リトアニア・アリトス市「JAPAN ART FESTIVAL」にて実演
平成19年 新作名刀展 日本美術刀剣保存協会会長賞受賞(最高賞)
平成20年 新作名刀展 優秀賞受賞受賞
平成21年 新作名刀展 薫山賞受賞(特賞)
平成22年 新作名刀展 日本美術刀剣保存協会会長賞受賞(最高賞)
平成23年 新作名刀展 努力賞受賞
平成24年 新作名刀展 優秀賞受賞
平成25年 新作名刀展 優秀賞受賞
平成26年 新作名刀展 優秀賞受賞
平成27年 新作名刀展 寒山賞受賞(特賞)
平成27年 兵庫県芸術奨励賞受賞
平成28年 新作名刀展 寒山賞受賞(特賞)

 

受賞歴・展示・講演・実演・出版物・テレビ放送など
詳細 ? ?公式ホームページへ▼

 


◆刀鍛冶になるまで
大西:刀鍛冶になろうと思ったきっかけについてお聞かせください。

髙 見:高校2年の時、新作名刀展の図録が台所のテーブルの上に置いてあり、「刀って凄いじゃないか!人間の手でこんなに美しいものを作 ることができるんだ!」と心を打たれました。 あと、師弟関係の素晴らしさについて父から話を聞いていたり、人生は一度しかないのだから、男なら挑戦するべきだと背中を押してもらえたのが刀職人になろうとしたきっかけの一つですね。そして、父に 頼み、河内國師匠の住所を教えてもらい自分の思いを手紙に書いた訳です。後日、「一度吉野に遊びに来なさい」と返事をもらい弟子入り を志願するチャンスを得たわけですが、それから何度も何度も吉野を訪ね、全て断られました。そして高校卒業間近の冬にようやく弟子入りを認めていただきました。

大西:弟子入りの頃の当時のお話についてお聞かせください。一人前の刀鍛冶になるには、修業期間はどのくらい必要なんですか?

髙 見:基本的に親方の元で五年以上の修業をした者に刀鍛冶の試験を受ける資格が与えられます。私の場合は弟子入りから八年目に独立をしました。修業期間中は師弟制度のもと、公私共に厳しい日々の生活を何年も過ごすことになり、中には弟子入りしてから翌日から数年で辞めてしまう者もいます。親方と弟子は、朝から晩まで炭で真っ黒になり、汗を流しながら多くの時間を共に過ごします。親子や兄弟のような信頼関係や苦労を分かち合えるパートナー関係が自然と養われていきます。そんな環境の中で日々過ごす関係性であるからこそ学べたあらゆることが現在の私の知識と財産につながっていると考えます。一言で表現すると「師弟関係・師弟制度」の中でしか得られないものがあるってことでしょうか。

◆職人・匠としてのお仕事
大西:どのような形で依頼されるのですか?納めるまでの苦労話についてお聞かせください。

髙見:基本的にはお客様からのご依頼・注文を受けてから製作になります。文化庁の作刀制限があり、年間に製作すことができる数が24振りと制限があります。私の場合、お客様へお納め出来る刀は5~6振りです。1振り納得できる作品を作るのに、3振り製作し1振り成功すれば上手だと言われます。作品によっては5振り製作して1振りしか出来なかった事もあります。だから完成するまでに時間がかかるのです。

大西:どのようにPR活動するのですか?営業的な宣伝をおこなっているのですか?

髙 見:一番は、上手くなることです。刀づくりに情熱と自信を持つこと。そうなるためには、やはり尊敬できる師匠のもとに弟子入りをすることが大切だとおもいます。実力と向上心がある師匠の技を盗むには、高い志と諦めない気持ちしかないかと思います。そんな厳しい環境の中で長期間師匠の元で学び、修業期間を終え、弟子として認められる事によって、周りから得られる信用が違ってくることは現在まで数多く経験してきました。

◆人と人がつながる・・・人間性
大西:一流の技術を学ぶには、一流で学べってことですね。

髙見:技術だけではなく、人間性を磨くことの重要性を師匠から学びました。

大西:職人としての素質や取組みへの姿勢といったことですか?

髙 見:モノづくりに真摯に向き合う、いわゆる職人と言われる私たちは、作業場で同じことを繰り返すことをメインにおこなってますよね。 コミュニケーションを取ることはあまり上手くないって方が多いです。しかし、いくら技術があって、良い作品を作れたとしても、それを 手に取って喜んでくれる人たちがいないと寂しいですね。何か人のために役立ち、喜ばれる、ニーズがあって、さらにより良いモノづくり へと進化する。そのサイクルがあるから、技術も伝統も 長い年月をかけて受け継がれていく。手仕事には必ず思いや心が宿ると思っています。必ず誰かが見ていますし、人に伝わると思います。 真面目に頑張っていると人が集まり、仕事も信用も生活の事なども後から必ず付いて来るとおもいます。

大西:コミュニケーションや信頼関係といった人間性を高めることが大切なんですね。

髙 見:私の親方は交流関係も広く、当初の私のご依頼の半数以上が親方からのご紹介のお客様でした。親方の信用があり、それに答えられるように真面目に頑張って来たからこそ現在の私があるのです。今では日本刀は芸術・アートという部分での価値が一般的となっていますが、古くは日常的に需要があるモノとして多くの職人さんがいました。武士の表道具であり命を掛ける物ですので、最後は誰に作ってもらいたい、誰にお願いしたいか、ってところは人と人の間 で決まることではないでしょうか。

大西:コミュニケーションや信頼関係といった人間性を高めることも大切なんですね。

◆職人としての素質
大西:弟子になる人の素質、向き不向きってありますか?

髙 見:私よりも弟弟子たちのほうが、ここは上手いなと感じる時がありました。コンクールで弟弟子たちに負けたことがあり、悔し涙を流した事もあります。私より器用な所があったり、完成した刀も私のものとは違います。刀作りには様々な工程があり、各工程に向き不向きが個々にあります。一つの工程だけ優れていても良い刀を仕上げることができません。私は親方から全体をまとめることの大切さを教わりました。その意味を理解したことで、視野も考え方も大きく変わってきました。しかし、「我慢、辛抱」が出来ると言う事は一番大事な素質なのです。

大西:言葉で覚える・目で覚える・・・どんなタイプですか?

髙 見:そこですよね。個人個人感覚も違えば理解の仕方も違う。技能を備えた上で、その感覚を伝え合うわけですから。親方としては実際に 作業を見せること、そ して、弟子は自分で数をこなすしかありません。失敗談やコツなど、言葉で理解する人、実際の作業を見て理解する人、繰り返し自身で工夫できる人、ひとそれぞれですよね。私の場合は、実際に見て体で覚えるタイプでした。

◆喜んでいただくこと
大西:製作で特に気を遣う点はありますか?

髙 見:お客様の願いやイメージに少しでもお応えできるよう、できる限り努めます。お客様に喜んで頂ける事が、刀鍛冶にとっての喜びですね。自分の中で「自信作」より 「2番目」が評価されることもありました。自分の評価よりも他人の評価のほうに可能性があることだってあります。職人はプライドや誇りも当然ありますが、言い方をかえれば、自分に自信や腕があるからこそ、まずはお客様のことを一番に考えるかと思います。私は刀を納めた後のことを考えます。お客様から満足の声をいただき、そこから新しいお付き合いが始まるのです。そのような事を想像しながら一つ一つの工程に今出来る精一杯の力を注ぐようにしています。

大西:髙見さん自身の今後の展開や思いなどを最後にお聞かせください。

髙見:「あの人に任せておけば大丈夫」と言われる人であること。私が思う匠と は、人間味と実力を備えている人。誰にでも優しく、笑顔で楽しく人と接することができる人。その道に秀でている人の事だと思います。 仕事に関しては他の追随を許さないような仕事が出来るようになりたい。現代では「上手な人はいるが名人はいない」とよく聞きます。初心を忘れないように、若い気持ちで日々努力を惜しまず取り組んでいきたいですね。

大西:本日は貴重な刀鍛冶の現場を拝見させていただきありがとうございました。刀鍛冶として活躍する髙見さんの取組み方や皆さんに喜んでいただくことを大切に思う姿勢など、いろんな勉強をさせていただくことができました。
ありがとうございました。

◆鍛刀場、対談風景

鍛刀場前にて。日本刀の完成までには、長い時間と数々の工程、そして、集中力、忍耐力といった精神性、また、それらに耐えることができる強靭な体・・・。掌、拳、腕回り、足腰…….お会いした瞬間に強靭な肉体と精神性が伝わってくる髙見國一氏とのツーショット!

ありがとうございました!